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2017年10月29日更新

発酵デザイナーに聞いた、「食品だけではない、発酵の最先端」の話

知っているようで知らない「発酵」のひみつVOL.2

第一回では「発酵」の定義から意外な発酵食品まで、思わず膝を打つ面白い話を多く聞けた。

ちなみに、小倉さんが自宅兼発酵ラボを構えるにあたって標高800メートルの山腹を選んだのは、菌の生態系が多様になる条件が揃っていたからだ。
JR塩山駅から車で15分ほどにある発酵デザイナーのアト...

JR塩山駅から車で15分ほどにある発酵デザイナーのアトリエ兼ご自宅

すなわち、「風通しがいい」「周囲に土がたくさんある」「仕込みのためのいい水が湧いている」「1日の寒暖差、四季の寒暖差が大きい」という諸条件を満たしていた。
蒸した玄米に麹菌をかける

蒸した玄米に麹菌をかける

「これはお味噌汁用の味噌を仕込んでいるところ。麹菌は種麹屋さんから直接購入しているんですが、種麹屋さんっていま全国に10社弱が残っています」

ここで小倉さんが3つのシャーレを持ってきた。
3つの場所で採取した菌

3つの場所で採取した菌

「左から順に庭、リビング、キッチンラボで採取した菌で、室内の奥に行けばいくほど雑菌の数は減り、特定の発酵菌が優勢になってくる。いかに屋外に雑菌が多いかがわかるでしょう。同じエサをやって同じ条件でやってるのにこれだけ差が出てくるんです」

発酵と文化人類学は密接な関係がある

第一回では触れなかったが、小倉さんが発酵に目覚めたきっかけは20代半ばに体を壊したのがきっかけ。

「デザイナーになりたての頃で要するに働きすぎたんです。目は覚めてるんだけど血圧が低過ぎて体を起こせない、喘息で夜も眠れないという状態までいったところで、たまたま味噌屋の娘の会社の後輩と、彼女の大学時代の恩師の発酵学の権威である小泉武夫先生に会いにいくことになりました」

そのとき、小泉先生に「お前、免疫不全で体質弱いから発酵食品食わないと死ぬぞ」と脅されたという。アドバイス通りに発酵食品を食べる始めたところ、めきめきと快癒。これがきっかけで小泉先生の本を読むようになり、発酵に興味を持ったのが始まりだという。

小倉さんは早稲田大学文学部で文化人類学を学んでいた。発酵のことを調べていくうちに、発酵という現象は文化人類学や子供の頃から好きで勉強していた生物学に似ていることに気づいたそうだ。
今年5月に刊行された著書『発酵文化人類学』

今年5月に刊行された著書『発酵文化人類学』

「発酵の文化を紐解いていくと、その土地の制限や気候的な特徴に帰着します。発酵とか微生物の分野では、『どのように?』というHOWはサイエンスが答えてくれるけど、『なぜ?』というWHYには答えてくれない。このWHYに答えてくれるのが、社会学や文化人類学の領域です」
本棚にも発酵関係の書籍がずらりと並ぶ

本棚にも発酵関係の書籍がずらりと並ぶ

ちなみに、いまは単純に「発酵食品がブーム」ではとどまらないらしい。

「たとえば『哲学やってます』言われたら『古代ギリシャですか? 20世紀ドイツ哲学ですか?』ってなるでしょう。発酵もそれと同じで、いまは『どの辺の発酵ですか?』って聞かれるほど細分化しています」

最近では「菌活美女」も発酵に興味を持ち始めた

しかし、意外なことにデザイナーとして独立して以降、2010年ぐらいまではほとんど収入がなかったそうだ。

「死ぬんじゃねえかっていうぐらい大変でした。でも、2011年の震災以降、発酵食品や電気の自給に注目が集まり、若い人も『発酵のことをもっと知りたい』と言ってくるようになりました。その次に興味を持ち始めたのが『発酵食品を食べてきれいになりたい』という、最近よく聞く『菌活』にいそしむ美女の皆さまでした」

発酵デザイナーとしての仕事は軌道に乗り、現在はいわゆるクライアントワーク的なデザインの仕事はほとんどしていない。以前から個人的に開催していたワークショップも企業や自治体から仕事として声がかかるようになったという。
小倉さんが主催するワークショップの様子

小倉さんが主催するワークショップの様子

「最近だとメディアで連載をしたり、発酵に関する映画やドキュメンタリーの上映イベントで話をしたり。美術館や博物館から一緒にプロジェクトをやってほしいという依頼もあります」

もちろん、フィールドワークも欠かさない。1ヶ月の半分は家を空けているという。

「たとえば、中国にはベジタリアンのお坊さん向けの発酵食品があります。動物性のものを一切使っていない、精進料理の原型みたいなやつ。カメルーンにも魚醤みたいなのがある。ヨーロッパには水で溶いた小麦を発酵させて作る『ジュレック』というスープも。同じヨーロッパの一部に根付く『ウォッシュチーズ』はありえないほど臭い(笑)」
「ウォッシュチーズ」は熟成過程で、その土地のワイン・ブ...

「ウォッシュチーズ」は熟成過程で、その土地のワイン・ブランデーなどの地酒、または塩水で表面を何度も洗うことから「ウォッシュ」と呼ばれる

ニキビを治すためにも発酵が利用できる

発酵研究の最先端の話も聞いた。発酵はとくに医療の世界で注目を集めているという。

「たとえば、『バイオイノベーション』というんですが、遺伝子操作をして微生物から建材や産業資材を作る研究が進んでいます。あるいは、健康じゃない人の腸内環境を改善するために健康な人のウンチを移植するとか。カプセルスタイルと浣腸スタイルの2つあるらしいんですけど(笑)」

その応用版でニキビを治すためにも発酵が利用できる。ニキビの原因は皮膚の上にいる微生物の一種が悪さするのが原因だとわかっていて、きれいな肌の人が持っている微生物をニキビで悩んでいる人の皮膚に移植するというわけだ。

「僕も一部仕事で関わっていますが、これら以外にも微生物を使ったとんでもないイノベーションがたくさん起きているんです」

取材が終わると、小倉さんから突然「お酒はよく飲みますか?」と質問された。答えは「かなり飲みます」だ。

「毎日寝る前にお酢を飲むといいですよ。酒飲みで血圧が高い人は血管が収縮してドロドロになるので、ある日突然死んじゃうこともあります。お酢でリスクヘッジしてください」

そして、「これ1本あげますよ」といただいたのが泡盛のもろみを絞ったお酢。独特の酸っぱさは麹菌によるものでふつうのお酢よりかなり飲みやすい。寝起きも非常にスッキリするという。
お土産は沖縄産の「黒糖入り 泡盛もろみ酢」

お土産は沖縄産の「黒糖入り 泡盛もろみ酢」

「僕自身も発酵食品をしばらく食べないとすぐに体を壊す。発酵の効果は自分の体でわかっていますから」

様々な形で発酵がいまアツイことがわかった。しかも、面白い話をたくさん聞いたうえに健康にもなる。発酵に感謝の念が絶えない。
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取材・文=石原たきび
編集=大狼章弘

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