七五三は、子どもの成長を祝い、家族の絆を深める貴重な通過儀礼です。
しかし、ときに理想への強いこだわりや、親族間での価値観の相違が、主役であるお子様の心に影を落とすことがあります。
今回は、1組の家族が体験した切ない1日の記録を通して、形式的な完璧さよりも優先すべき、家族の記念日の本質を考えましょう。
七五三で娘が「笑えなくなった」
娘にとって初めての七五三。
私たちは、終日娘の負担にならないよう、神社の予約時間に合わせてゆとりのあるスケジュールを組んでいました。
夫とも「娘の笑顔が何よりの思い出」と確認し合っていた、大切な日です。
当日、私たちは予約時間の2時間前という義母の指示に従い、まだ眠気の残る娘を連れて集合することに。
着つけ中、美容師の配慮ある提案に対し、義母は「もっと華やかに」「地味すぎる」と再三、口を挟んできます。
その様子に、娘は鏡の前で困惑の表情を浮かべていました。
そして、写真撮影でも、義母はカメラマンの隣から大きな声で「笑って！」「こちらを向きなさい！」と指示を飛ばし続けるのです。
娘は、自然な笑顔を失い、緊張した面持ちで、その場が固唾をのむような状況となりました。
夫も私も「えっ…もっと娘のペースがあるのに…」と困惑しつつ、義母を否定できないまま、時間だけが過ぎていきました。
すべての行事が終わり、義母は「完璧な段取りだった」と満足げでしたが、娘は疲れ果ててぐったりした様子。
親として、子の気持ちを優先するという最も大切な配慮を、義母の「善意」と「理想」に押し流されてしまったのです。
私たち夫婦には、切なさと、娘の気持ちを置き去りにしたことへの後悔しかありません。
義母の“段取り命”な性格が予想以上に強く出てしまい、ほろ苦い「モヤッ」だけが残る一日になりました。
（40歳／女性）
最後に
家族の記念日における親族間の価値観の調整は、多くの方が直面する共通の課題といえるでしょう。
形式的な完璧さの追求は、主役である子どもの心の負担となり得ます。
大切なのは、この体験談を通して見えてきたように、家族の記念日における優先順位を明確に定義し、それを主体的に守る姿勢です。
記念行事を円滑に進めるためには、事前の準備が不可欠です。
例えば、行事の目的（例：子どもの笑顔）を明記した「当日の行動指針」を作成し、親族間で共有することが有効です。
また、義母様からの指示に対し「子どもの体調を最優先させていただきたいので、スケジュールはこの通り進めます」と、感謝を述べた上で毅然とした態度で夫婦の決定を伝える練習も必要です。
子どもの気持ちを最優先するという価値観を、具体的な行動計画をもって守り抜くことが、家族全員にとって真に心温まる記念日を迎えるための鍵となるでしょう。
※Grapps編集部が独自に収集した実際の体験談をもとに記事化しています