夏休みの宿題で必ずといって出てくる「読書感想文」。文章を書くのが得意な子ならいいのですが、書くことがない、ましてや本を読むことも好きではない、となると親子ともども苦労します。
しかし親子で少し工夫をすれば、自分らしい感想文を書くことが出来るのです。本の選び方から感想文を書くポイントまで、ご紹介します。
本選びは子どもの好み重視で
「読書感想文」は、まずは本を選ぶところから始まります。
親が、名作や子どもの頃に読んだ本を子に薦めて書きなさいと言っても、読む気にさせるのは難しいですね。指定がある場合は仕方ありませんが、課題図書から選ぶ必要はありません。子どもが読みたい本を選びましょう。
しかし漠然と「何を読む?」と聞いても、中々決められるものではありません。子どもの興味に合わせた本をいくつかあらかじめ選んでおいた上で、選択肢の中から選ばせましょう。昆虫が好きな子なら虫が出てくる話、ピアノを習っているならピアノが出てくる話などを選びます。好きな映画やコミックをノベライズしているものなら、普段本を読まない子でも長い物語を読めるかもしれません。
読書をしない子でも、ノンフィクションなら話に入り込んで感じた驚きを素直に書くことが出来る、という場合もあります。長い話が苦手なら短編集を選んでも良いでしょう。
また、新しいものではなく、今まで読んだ話の中から子どもが好きなものを選ぶのもいいでしょう。読んだことのあるものならストーリーが分かっていますし、気に入っている話なので感情移入もしやすくなり感想文そのものに時間をかけることが出来ます。読むことに苦労して時間がかかってしまい、感想文を書く時間が少なくなってしまうのは本末転倒です。
本が決まったら、一人で読める子なら問題ありませんがそうでなければ親が一緒に読んであげるといいでしょう。子どもが求めるなら読み聞かせてあげても良いです。子ども一人で字を読む、ということにこだわりすぎず、本の世界観を楽しむことに重点を置きましょう。
押さえておきたい3つのポイント
読書感想文を書くときに「読んだけど何を書けばいいか分からない」「あらすじの紹介で終わってしまう」という悩みは多いようです。押さえておくべきポイントを知っておけば、悩みも解消されるでしょう。
3つのポイントは「どんな本を読んだか」「その本を読んでどんなことを感じたか」「読んでみて考えた自分の意見」です。そのポイントをおさえた上で、さらにふくらませるコツをご紹介します。
・本の紹介はあらすじだけではなく、その本を選んだ理由や興味を持ったきっかけを書く
・印象に残った場面・感動した場面は、読んで知ったことを引用したり要約したりした上で、感動した気持ちや疑問に思ったことを書く
・心が動いた場面では、主人公の気持ちや出来事を自分の実体験や心情と照らし合わせる。例えば「主人公がこの様に行動したところは自分と似ている」「主人公はこうしたが、自分ならどうしただろう・こうしただろう」など
・読む前と読んだ後の印象の変化を書く
・読んだ結果気付いたこと・考えたことを整理して書き、さらに「これからはこうしたいと思う」など自分の生活に即して書くとオリジナリティを出せる
こういったところを押さえておくと、内容をふくらませることが出来ます。
親子の協力プレイで読書感想文を攻略
読書感想文のポイントをおさえれば内容が濃くオリジナリティのある感想文を書くことが出来ますが、そのポイントをおさえることが難しい場合が多いと思います。一人で書けそうにない場合は、親が手伝ってもいいでしょう。ただし手伝いと言っても口を出してはいけません。あくまで言葉を引き出すだけのサポートとし、「そんなことは書かない」「感動するポイントはそこではない」などのダメ出しは厳禁です。
まずは低学年向けのインタビュー形式をご紹介します。
本を読む際に、心が動いたところに付箋を貼る様に促します。「心が動いた」というのは良い感情ばかりではなく、悪い感情でも構いません。子どもに伝える場合は「分かる」「そうなんだ」「びっくりした」「最高!」「なんでそうなるの?」「これは無茶だ」「ひどい」など分かりやすい言葉で伝え、そういう時に付箋を貼る様に伝えましょう。
付箋は大きめのものを用意し、なぜ貼ったのかをメモしておきます。子ども自身が付箋に書くのが難しそうなら親が書いておいてもいいでしょう。一通り読み終わると付箋がたくさん貼られた状態になっています。
次に、付箋に書ききれなかった感想をインタビュー形式でメモしていきます。子どもが受け答えに集中出来る様に親がメモを取るのが望ましいですが、インタビューしながら子ども自身がメモをとっても構いません。
インタビュー例としては
・一番面白かった・印象に残ったページはどこ?
・ここで〇〇ちゃんは「△△」と言っていたけどどうしてそう思ったの?
・〇〇君が主人公ならどうする?
・この絵のどんなところが好きなの?
など具体的に聞いていきます。言葉が出ない場合は質問を変えながら掘り下げていきましょう。
付箋とメモ帳で子どもの意見がしっかり書けていますので、最後にそれをまとめます。低学年であれば「はじめ」「なか」「おわり」の3段構成で十分です。メモしてある自分の言葉をどんどん使ってまとめていきましょう。
もう1つの方法は、部分ごとに分けて書かせて後でつなげる方法です。いきなり原稿用紙3枚書く、となるとハードルが上がってしまいますが、段落ごとに少しずつなら書けると思ってもらえますよね。以下の構成で書きやすいところから始めて、最後に数字の順につなげましょう。
1. 読む前の自分の体験・考えを2つ(8~10行)
2. ①に対しての気持ち(3行)
3. どうしてこの本を選んだか(3行)
4. あらすじ(6~10行)
5. 一番いいと思ったところ(3~5行)
6. どうしていいと思ったか(3行)
7. もし自分が登場人物だったら(5~7行)
8. これからどうしたいか(5行)
(原稿用紙400字詰め2枚の場合)
※「脚本家が教える読書感想文教室」(主婦の友社)
感想文を書くポイントがおさえられれば、文章力は二の次で構いません。まずは、本を読んで感じたこと・意見を表現できることが大切です。まとめた際に日本語がおかしい部分などを指摘してあげることで、文章力は身についていきます。
紹介した方法をそのまま使わなくてもいいのですが参考になる部分をアレンジしながら、子どもの感じたことを引き出していく工夫をしてみましょう。
さらに感想文をブラッシュアップする為に
今まで挙げたポイントに加え、押さえておくとより書きやすくなるポイントを知っておきましょう。
・「なぜ」から始める
書き出しに正解はありませんが、書き出しで悩んでしまう場合は「なぜこの本で感想文を書こうと思ったか」から始めるのがオススメです。疑問を自分につきつけて答えていくことで、推進力がうまれ文が進みやすくなります。
・伝える相手を決め手紙風に書く
先生や同じクラスの子、家族など誰でもいいので伝える相手を決めて書くと文章にしやすくなります。それを手紙の様にすると、思っていたことを書きやすくなるかもしれません。文章にしづらい場合に試してみましょう。
・ビフォー・アフターに注目する
読む前と読んだ後で「自分の心がどう変わったか」にポイントを置いて書いてみます。比べるものがあると人は言いやすくなります。読む前の印象から読んでみてどうだったか、ターニングポイントはどこかという三段構えを意識すると感想が書きやすくなります。
読書感想文は小説や伝記を読まなくてはいけない、立派な内容を書かなくてはいけないと思うと子どもは書き出せず、大人もどうやって教えたらいいのか分からなくなります。しかし、読んだ内容からどんなことを考えたのか、どう感じて今後どうしていくか、などを自分の言葉で表現することが大切であり、内容の良し悪しにとらわれる必要はありません。
子どもは、主人公に感情移入しながら読んでいく楽しさを感じることが出来るかもしれませんし、親は書く過程でインタビューして「この場面でこんなことを考えるのか」と子どもの意外な頭の中をのぞくことになるかもしれません。親子で同じ本を読んで感想を言い合ってみるのもいいですね。面倒なものと思われがちな読書感想文ですが、是非親子で楽しんでTRYしてみましょう。