将来について何かと不安の多い現代。預貯金しても利子はほとんどつかず、増えることはありません。そこで株取引や投資信託などの資産運用に注目が高まっていますが、その流れは大人だけではなく子どもにもきているようです。
海外に比べてまだまだ遅れている日本の金融教育ですが、子どもにはどんなことを教えていけばいいのでしょうか。
学校でも金融教育を学ぶ時代
「金融教育」と聞いて、意味は何となく分かっても実際にはどういうことなのだろう?と考える方も多いと思います。
ウィキペディアでは「金融教育とは、お金や金融の様々なはたらきを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である」と定義が書かれています。
例えば消費税を例にとると「買い物をしたら10%の消費税を払う」ということは理解している人がほとんどだと思います。しかしその消費税がどの様に国におさめられどの様に使われるのか、なぜ税金が必要なのか、海外と比べて日本のシステムの優劣はどうかなど、全体の理解が大切です。
この金融教育については、学習指導要領の改訂で加えられることになりました。高等学校の指導要領において、2022年から金融商品のメリット・デメリットや資産形成について学ぶことになります。生涯を見通したリスク管理の考え方などについても学ぶことになります。
こういった背景に基づき、小学生の内から金融教育を始める流れが始まっているのです。
海外の金融教育事情
資本主義を生き抜くために、海外、特にアメリカでは金融教育が盛んです。高金利時代は過去のものとなり、銀行預金以外の資産運用や投資を学ぶ重要性は高まっています。
・アメリカ
アメリカでは国内政策として幼少からの金融教育が推進されパーソナルファイナンス(個人のお金や計画や管理)が大切に考えられています。しばらく使う予定のないお金はどんな状態にしておくのが効率的なのか、株式や投資信託で運用するのはどちらが有利でどんなリスクがあるのかなどを自分なりの考えでお金を動かすための知識を学びます。
投資にはリスクがあり、度を過ぎるとギャンブルになるという危機管理も大切です。リスクと利益を学ぶため、金融を学べる無料教材も多く用意されています。経営者が借り入れと投資をしながら企業を発展させるという子ども向けゲームなどが存在します。
こういった金融教育への環境整備が整っているので、若年層でも経済と金融に関する理解が備わっていくのです。
・イギリス
イギリスでは2014年から公立学校のカリキュラムに金融教育が盛り込まれ必修化されました。3歳から金融と経済について学び、お金に関する社会構造理解を目指しています。教科としての金融教育はありませんが、英語・算数・道徳の学習の中に金融教育の視点が含まれています。
例えば算数では「遠足に行った時の電車賃やこづかいの使い道」や、道徳では「友だちにお金を貸したが返してくれない場合どうしたらいいか」などをテーマにグループディスカッションを行い、お金に関する考える力を高めています。
・フランス
フランスではNPOを中心に銀行口座や投資に関する教育を実施しています。最近ではビットコインに関する授業をカリキュラムに含めるなど、最新の動向を踏まえた動きもあります。
・ドイツ
ドイツでは国家やNPOが中心に、高齢者から若者に伝える「退職準備学校」や、「銀行・経済の学校」「貯蓄銀行学校サービス」などの制度があります。投資と貯蓄と退職や、銀行口座とお金の基本、信用と負債などについて学びます。
金融教育は、まずはおこづかいからスタート
海外に比べると日本の金融教育は遅れています。近年日本でも金融教育の必要性を説く声が高まっています。せめて自分の子どもには学んでほしいと考えている方もいるでしょう。しかし実際教えるとなると、どう教えていいのかが分からずに悩んでしまうのではないでしょうか。
まずはおこづかいでやりくりすることを学び、そこで我慢する・管理する力を身につけた成功体験から投資に進むことが望ましいといいます。その為のポイントを見ていきましょう。
・放置しない
おこづかいを学びに変えるには、放置してはいけません。おこづかいを与える日(月1回、週1回など)を決めたらおこづかい帳をつける様にします。使い方が計画通りであるかを
話す時間を必ず作ります。もし実践出来ていなければ、課題を一緒に解決することが大切です。
・範囲を決める
おこづかいをもらうと全部使ってしまう子、欲しい物の為に目標を持つ子、もったいないから全く使わない子など、その子の性格により使い方は様々だと思います。導入にあたっては、自分で払う項目の線引きを決めておくことが大切です。文房具、お菓子、書籍など、項目によって払う対象を決めておきます。
例えば漢字ノートが終わりそうな時、親が払うと決まっていれば子どもはおこづかいを気にする必要はありませんが、子どもが払うと決まっていれば残額などのことを考えて使う必要があります。この線引きがあいまいだと、管理する気持ちが失せやる気ダウンにつながることもあるので注意が必要です。
・継続する
半年や1年などの短いスパンで行ってもあまり意味がありません。欲しいものを目標として貯めている場合、途中で少し使うこともある為中々貯めることが出来ません。
さらに、予算の見積もりを誤ってしまったという失敗があった時、見直しをしたいと思っても期間が短いと出来なくなってしまいます。失敗も成功も経験と考え、色々なことを学んでもらうためにはある程度の期間が必要であり継続するのが一番良いでしょう。
・使い方に口を出さない
おこづかいの使い道については、絶対に口を出してはいけません。「そんなお菓子やマンガは必要ないでしょう」などと思っても、与えたおこづかいの使い道は子ども本人に委ねます。
その為には、金額を多くしすぎないという最初の設定はとても大切です。ただ最初の内は「買う前に必ず申告する」などのルールを定めておくことは場合によって必要です。その場合も買いたいものについて否定はせず、どうして欲しいのか、本当に必要なのかなどを説明させ、話し合ってから買う様にしましょう。
投資の場合は、リスクがある為親の情報提供は必要です。しかし頭ごなしに否定をするのではなく、どんなリスクがあるのか、株式であればその会社の成長性についてはどうだということを客観的に伝え一緒に考える様にします。
最終的に子どもが出した結論は否定しません。大切なのは、使う・投資する際に衝動的ではなくまずは考えるというステップを踏んでいくことなのです。
実際に投資する小学生が増えている!
コロナ禍で投資が注目を集める中、小学4年生が米国株取引を始めたというニュースが話題になりましたが、きっかけは人気ゲーム「あつまれ!どうぶつの森」だったと言います。
このゲームにはお金を学ぶ為の「稼ぐ」「借りる」「増やす」という3つの要素が詰まっています。島の果物や魚を売ってお金を稼ぐことが出来ます。家を建てる際はローンを組み、完済すると家を大きくする為の新たなローンを組むことが出来ます。
週に一度買うことの出来る野菜のカブは、買う際の価格が毎週異なる上に、売値は毎日午前と午後で変動します。買った額よりも安く売ればもちろん損をしますし、1週間後の次の売り手が来る時まで保有しているとカブが腐って売り物にならなくなる為、全額損をしてしまいます。
ニュースで取り上げられていた小学生は特にカブ取引に興味を持ち、毎週買値をチェックして安い時にはたくさん購入し高い時には少数にするようになりました。「高い時は買わない選択肢もある」と親が助言すると、「持っていなければ全く得しないから、儲けは少なくなってももっていたい」と言ったそうです。毎日午前午後のカブ価チェックをもちろん行い、カブ価が上がっていてもわずかの場合は保有中の3分の1だけ売って残りはもう少し様子を見るなど、自分で考えながら部分売却を行っていたとのことです。
こうした考えを学ぶ姿を見て、ご自分で米国株取引などを行っていた親御さんが実際の取引を勧め株取引を始めたそうです。投資を行うことで価格チェックを欠かさないだけではなく、日本や世界の経済について興味を持ち調べる様になったとのことでした。
子どもが学べる株式投資スクールなども徐々に増えています。実際に通っているという小学5年生の女の子は、エストニアが注目されたIT国家であると知りその国のSTREAM教育に興味を持ち、クラウドファンディングを利用して自力でエストニア行きを実現したという高い意識の持ち主です。10代で起業することを目指して株式投資を学ぶスクールに通っているそうです。
子どもの頃から資産運用や株式投資について学ぶことについては賛否がある様ですが、学ぶ機会がなければ「投資とは何か」すら知ることが出来ず選択することも出来ません。幼少期から資産運用する・興味を持つことで、自然と経済の仕組みに興味を持ち、考える癖がつきます。
将来の夢や未来の実現に向けて、どうやって必要なお金を導き出しリスクを分散していくのかという具体的な計画を立てることが出来るのです。無料で投資が学べるゲームなども少しずつ増えており、子どもが少しでも興味を持っているのならまずは親子でゲームを始めてみるのもいいですね。
前述した「どうぶつの森」でのカブ取引は筆者の息子も興味を持ちましたが、何度か説明してもどうしてお金が増えるのかという感覚があまり理解出来なかった様です。しかし興味を持ったこの機会に、もう少し踏み込んで説明しながら仕組みについても学んでほしいと思いました。
まだ遅れている日本の金融教育ですが、親子で自発的に学ぶ方法はたくさんあります。子どもだけではなく自分の将来も含め、投資や資産運用について一緒に学んでみるのはいかがでしょうか。