義実家での食事は、和やかな交流の場であると同時に、思わぬ文化の違いに直面する場でもあります。
自分にとって「当たり前」だった家庭の味が、義実家では通じないことも少なくありません。
ささいな食文化の違いが、気まずさや孤独感を生むこともあります。
しかし、それを乗り越えられたとき、夫婦の絆を深めるきっかけとなり、やがて笑い話として語れる大切な思い出に変わるはずです。
今回は、そんな食卓でのカルチャーショックを、前向きに受け止めるためのヒントを紹介します。
義実家で初めてお寿司を…
義実家で初めてお寿司をごちそうになった日のことです。
テーブルの中央には、色とりどりのネタが美しく並べられ「今日はごちそうだ~!」と私の心は自然と躍りました。
ところが、義母が手に取ったのは醤油ではなく、甘いたれの入ったポットだったのです。
「お寿司には、やっぱりこれが一番なのよ」
そう言いながら、義母は当たり前のように、すべての寿司にそのたれをたっぷりと回しかけていきます。
「えっ…これって、ウナギや穴子にかける専用のたれじゃないの…?」と私は思わずその場で固まってしまいました。
私の実家では、寿司は醤油でいただくのが当たり前。
ネタに合わせて醤油やタレを使い分けるのが普通だったからです。
助けを求めるように夫をちらりと見ました。
しかし、夫も醤油派だったはずなのに、何の迷いもなくその甘だれ寿司を口に運び「うん、やっぱりこれだよな」と満面の笑みで頷いています。
そのとき、義母、義父、そして夫の3人が同じ価値観で盛り上がり、食卓で醤油を求めるのは私だけという状況になりました。
まるで私の方がおかしいかのような空気に包まれ、恐る恐る「あの…私はお醤油がいいのですが」と伝えると…
義母は「えー、せっかく美味しいのに」と少し不満そうな顔をしました。
翌年、私の分だけと醤油を用意してくれたのですが、なぜかその上から甘だれも追加され、結局、味は混ざったまま。
どうやら私の好みは「変わり者のちょっとしたこだわり」程度にしか受け止められていないようでした。
今となっては友人に話すと必ず笑われる鉄板話ですが、当時はこの小さな文化の違いに、かなりのショックを受けたものです。
さらに、夫までが実家モードで当然のようにあちら側に立った姿に、軽い裏切りを感じたのも事実でした。
食べものひとつにも、これほどの価値観の差があること。
そして義実家という場所では、少数派はあっという間に孤立するということを学んだ出来事です。
ちなみにその後、義実家からお寿司をいただいた際は、台所でこっそり醤油をかけ直してから食卓に戻るようになりました。
(40歳/女性)
最後に
育った環境が違えば、食文化に違いがあるのは当然のこと。
それでも、夫の家族が持つ「当たり前」に直面したとき、戸惑いや孤独を感じてしまうのは自然な感情です。
大事なのは、違いを否定するのではなく、まずは「そういう文化なのですね」と受け止めること。
そのうえで「私はこうするのが好きなんです」とあくまで個人の好みとして伝えてみると、角が立ちにくくなります。
また、後からでも夫に「あのときは少し寂しかったな」と素直な気持ちを共有しておくことも大切です。
そうした対話が、次の場面での“連携プレー”につながります。
義実家との違いは、夫婦の絆を試すユニークな課題。
完璧を求めすぎず、ときにはユーモアと小さな工夫で乗り越える柔軟さこそが、心地よい関係を築く鍵になるでしょう。
※Grapps編集部が独自に収集した実際の体験談をもとに記事化しています