
祝・連載50回!な私は今、高度10972mの上空におります。
目の前のフライトマップによりますと飛行機は只今白海を横断中。
ロンドンに向かって順調に飛行を続けております。
機内での楽しみといえば、やはり映画。
このフライトでは『LA・LA・LAND』から『西部警察』、『この世界の片隅に』から『ゴッドファーザー』とまあ隙のないラインナップ。
その中で私が真っ先に見たのは『スウィート17モンスター』という悩める女子高生が主人公の物語。
実はこの映画、すでに試写会で観たにもかかわらずのおかわり。
主人公ネイディーンを演じるヘイリー・スタインフェルドはこじらせまくりの17歳。
彼女はハンサムな不良に恋しています。
ああ!私も17歳の時そうだった!
不良といっても盗んだバイクで走り出したり、夜の校舎を壊してまわったりする人ではなかったのですが、同じ歳で高校に行っていないというのは当時の私にとっては立派な不良でした。
彼が仲間とスケボーをしている公園によく遊びに行っては、ちらちら彼を見つめる日々。
ある日、彼が好きだと言っていたBLONDIEの『The Tide is High』を聴きながら公園へと向かった私。
いつものように猫背気味の姿勢でスケボーをしている彼の姿を見つけた次の瞬間、その彼をじっと見つめる一人の女の子の姿に気がつきました。
嘘でしょ…。
私の心臓が音を立てたのは、彼に彼女がいるという事実を知ったからではなく、その彼女が見覚えのある人物だったからでした。
彼女は、当時、××学園のM子といったら泣く子も黙る東京の有名女子高生。
超美人でスタイルが良くて、芸能人と付き合ってるとか、渋谷の日サロはVIP待遇でタダとか、授業中に煙草を吸ってるとか、都市伝説のような噂が常につきまとうようなそんな子でした。
そのM子が彼女だなんて!
私が彼のことを好きだってバレたらボコボコにされるんじゃなかろうか…。
少し距離をおいて座っている私にM子は「いる?」とガムを差し出してきました。
ガム、あまり好きではなかったけれど、断ったらボコボコにされると思い、私は「ありがとう」とそれを口に入れました。
ブルーベリー味。
M子っぽくないなあと思ったのを憶えています。
緊張しながらも少しずつ話をしてみると、M子は私たちが作り上げたM子とはまったく違う人物でした。
誰かが言った冗談に声をあげて笑い、誰かが吸っていた煙草の煙にしかめっ面をして手をパタパタと仰ぎました。
その日、17歳の私は自分が失恋したことよりもM子と同じ人を好きになったという事実に何故か誇らしい気持ちになっていました。
17歳の恋なんて、そんなものだったんだろうなあ。
相手云々ではなく、まずは「自分」という恋。
そして39歳。
今の私はといえば、相手のことを考えていたらもう恋なんてできないのでさらに「自分!自分!自分!」
さあ、数時間後にはロンドンだ。
恋はどこに落ちているかわからない。
ロンドンでも「Me!Me!Me!」で邁進するぞー!