“【お便り募集】文筆家ひとみしょうさんにあなたのお悩み解決してもらいませんか?”にお悩みを送ってくれた方の中から、ピックアップしてひとみしょうさんが解決していきます。
<目次>
〜「ゆりさん 35歳」のお悩み〜
こんにちは。
元カノと長く付き合って、それをブログに残してある彼との付き合いがツライです。
色々な所に一緒に行った記録がリアルすぎて……。
本人は、それは過去だからと言いますが、イヤで別れたい気分です。
しかも…彼と元カノは、すれ違いで別れたのであり、嫌いになって別れたわけではないようです。
苦しいので、いっそのこと別れたいくらいです。どうしたらよいでしょうか。
〜ひとみしょうさんのお悩み解決コラム〜
ゆりさんが十分に理解できていないことが1つあって、それは、過去のブログを残している彼は、「元」カノが好きだということ、つまり、今の彼女ではなく、過去のある時点における彼女のことが好きだということです。
同時に彼は、過去のある時点の自分のことが好きなはずです。「元」カノが好きとは、そういうことだからです。
つまり彼は、過去に生きており、ただ今現在を生きていないのです。
対して、ゆりさんは、今を今として生きているはずです。
過去に生きている人と、ただ今現在を生きている人って、感覚がいちいち合わないから、なにかにつけ、つらいですよね。
角を曲がる女・振り返る男、その真意とは?
一般に、男って、放っておくと、なぜか過去に生きるように生まれついているようです。
たとえば、男女の別れを表現するしかたに、「女は角を曲がるのに対し、男はまっすぐ道を歩き続ける」というのがありますね。
それは、一般的には「女は元カレのことをすぐに忘れるのに対し、男はいつまでも元カノにすがって生きる」などと解釈されていますね。
たしかにその通りなのだけれど、でも同時に、男はなぜか過去に生きがちな生き物で、女はなぜか「今」を生きがちな生き物だ、ということも言えると思うのです。
ではなぜ、男は過去に生きがちなのでしょうか?
ゆりさんの彼は、なぜ過去に生きているのでしょうか?
元カノのことが好きだから? ではないと、冒頭に書きましたね。彼は「あの頃の」彼女が好きなのだと冒頭で言いました。具体的には、彼は「今」というこの瞬間を、「過去」にしている、つまり、彼の生き方はガチャガチャしているのです。
今の彼女は、もしかしたら彼のことなど好きではないかもしれない。だがしかし、彼は、ただ今現在、元の彼女のことを忘れることができない、つまり過去が好き。
つまり、時を止めたまま、つねに前に動いている今という時制を彼は生きているということですね。ややこしいことをする彼ですね。
彼の深層心理はこんな感じかも!
彼はなぜそんなややこしいことをするのでしょうか?
ゆりさんは、相談文に<彼と元カノはすれ違いで別れたのであり、嫌いになって別れたわけではないようです>と書いていますね。ここにヒントがありそうです。
たとえば、嫌いになって別れたわけではないふたりが、その後、紆余曲折あって、ふたたび結ばれ、付き合うどころか結婚するケースがありますね。
彼女と別れたのちも、彼は彼女のことを一途に思い続け、その結果、彼が勝利した。つまり、今を過去として生きてきた者が、なんらかの作用によって、神様のように、過去をふたたび現在に変え、彼女と付き合い結婚した、というケース。
このようなふたりは、以下のいずれかの(あるいは両方の)可能性をもっています。
(1)お互いに、自分が自分の人生になにを求めているのかがわかっていない
(2)じつはふたりは運命の赤い糸で結ばれている(つまり言葉で表現できる範囲外の、いわば神的な愛で、じつは結ばれている)
どちらも、(言い方はきついけど)部外者(この場合はゆりさん)がどうすることもできないことです。
彼が自分の人生になにを求めているのかを知ることができるのは、彼だけです。
また、(2)に関しては、彼も彼女も、そんなことはわかっていません。あとから「じつはそういうことだったのか」と気づくのみで、今のふたりにそのようなことはわかっていません。
どんなに愛し合っても、相手の認識の中には入れない
恋愛において、愛し合うふたりは同じものを見ていると言われますね。
ゆりさんの場合だと、「元カノのことを見ている彼」を、もちろん彼も見ているし、ゆりさんも見ている、という具合に。
でも、同じものを見ているようで、認識のしかたは別々です。
「<おれは>元カノのことを見ている」と、「彼が」感じるのは彼だけでしょ?
ゆりさんの場合は、<おれは>ではなくて「<彼は>元カノのことを~」という認識になるでしょう?
彼のことを彼自身が認識するしかたと、ゆりさんが彼のことを認識するしかたとは、全然別なんですね。つまり、同じものを見ているようで、じつはちがうものを見ているんですね。
そして、「おれは元カノのことを見ている」と認識する彼の中に、ゆりさんは絶対に入っていけないんですね。
ゆりさんが見ている彼というのは、ゆりさんの視点であり、同時にゆりさんの主観であるわけですが、そのゆりさんの視点や主観に、彼が絶対に入っていけないように(ゆりさんが彼と別れたいくらいだと思っている気持ちに、彼は絶対に入っていけないように)、ゆりさんもまた、彼の視点や主観に、「絶対に」入っていけないんですね。
恋愛が孤独である理由(ゆりさんがつらい理由)
そこに、恋愛という営為の孤独があるのだとぼくは考えています。どうじに「私」という存在の限りない独立性(特別さ・切なさ)があるのだとも思います。
ゆりさんが絶対に入れない領域をもっている他人の中で(つまり、ゆりさん以外の人全員の中で)、絶対に入れない領域も含めて愛せる相手と付き合うしかない、というのが、ぼくの結論です。
彼に元カノとのブログを削除してもらいましょうとか、そんな子供じみたこと(失礼!)を書きたくなかったので、長く複雑な回答になってしまいました。
(ひとみしょう/作家)
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