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2020年07月03日更新

西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百三十五回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

私は一人暮らしを始めたのが35歳と遅く、今年で3年目なのですが(さらっとサバを読む)いまだ頑なに守っていることがあります。それは「よっぽど」のことがない限り食器を買わないということです。その「よっぽど」はといえば、アリゾナ州ウィリアムズで入ったステーキハウスで、使っているお皿の可愛さに「気に入った!いくらでもいい!売ってくれ!」と店員さんに頼んだところ「普通にレジのところで10ドルで売ってるぞ」と言われて買ったお皿と、昨年、小田急百貨店で開催されていた大大大大大好きな『おばけのアッチ』40周年記念イベントで手に入れたアッチのお皿。それ以外の食器は全て、母と暮らしていた家から持ってきたものです。

 

毎朝コーヒーを飲むマグカップは、小学生の時から使っている年代物。お風呂あがりに冷たい水をぐびっと飲むガラスのコップは、母が新婚の時に買ったフランス製のビンテージ。決して食器に興味がないわけではありません。それどころか毎年2月に開催されるテーブルウェア・フェスティバルに足を運ぶほど、食器好きな私。では、なぜ買わないのか。それは、一人暮らしを始めた時に「食器は結婚してから揃えよう」と胸に誓ったからなのです。

 

以前、友人である駐在妻が日本に帰国が決まった際にこんなことを言っていました。「駐在先で買っちゃいけないもナンバー1は食器なのよね」彼女はバンコクで暮らしていたのですが、豪邸暮しに安い物価という夢のようなセレブ生活を送っているうちに、あれよあれよと日本では絶対に使わないであろうアフターヌーンティーのケーキスタンドまで買ってしまったそうです。

 

「食器は落ち着いた生活の中で選ばなきゃダメよ」一人暮らしを始めたばかりの時にそう言われた私は、妙に納得。この生活がいつまで続くかわからないもんなあ。当時はまだ35歳ということもあり、お皿を買うにしても「2枚で買っても、子どもが生まれたら足りなくなっちゃうしなあ」と彼氏すらいないのにまったくいらぬ心配をしていて、本当にタイムマシーンがあったら即行で飛び乗って「大丈夫!むしろ1枚で大丈夫!」と教えてあげたい。

 

ただ、お箸だけは随分とくたびれていたので一人暮らしを機に新調したことを憶えています。場所は渋谷の無印良品。良いなと思った物には長さが2種類ありました。ほんの数cmなのですが、自分で持ってみると短い方がしっくりくる。でもこれって男の人が持つとどうなのだろう?居もしない彼氏の心配を始めた私は、近くにいた大学生風の青年に「すみません。ちょっと、このお箸持ってみてくれます?」と声をかけました。言われるがままに箸を持つ青年。「男の人が持つには短いのかな?」「あー、そうですね。そう言われるとそうかもしれないです」「そうか。ありがとう!」

 

無印良品でいきなり知らない女に箸を持てと言われたあの青年は今、どうしているだろうか。そして青年にそこまでさせておいて最終的に短い方を2膳買った私はどこまで勝手なのだろう。結局、私の家で男の人が箸を使うようなことはこれまでに一度もなく、引き出しの中で眠ったままとなっています。しかしこの調子でいくと、食器を買えないまま死ぬという事態にもなりかねません。そのためにも、やはり恋をしなくては。憧れの食器、ベルナルドのロワイヤルシリーズを揃えるその日のために。


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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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