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西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百三十八回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

私は女優、作家業の傍ら、知人の会社で働くキャリアウーマンでもあります。今回はそこの職場でのおはなし。最近、職場に新しく入ったバイトのKくんは、とても仕事熱心で意欲的に動いてくれます。こちらがお願いしたことを「はい!」とすぐにやってくれるのは20代特有のフットワークの軽さでありましょうか。そんなKくんの雰囲気はどちらかというとオタクっぽくて服装には無頓着。少しは気にすれば良いのになあ。こんなんじゃ彼女もできないよ。と、おばさんはてきぱき動くKくんを眺めながら、勝手にその身を案じておりました。

 

そして、ある日の昼休み、一緒に働いている20代女子たちとランチをしていた時のことです。「Kくんってすごく良い子だけど、服装に無頓着だよねー。今時、あんなダサい子なかなかいなくない?」と私が眉をひそめて小声で言ったところ、全員がきょとんと私を見て箸を止めました。「いや、別に服装で人を判断するわけじゃないけど、あそこまでダサいのは珍しいなと思って。お父さんの服でも借りてるのかな?」

 

すると1人の女子が驚いたように言いました。「西山さん、Kくんはめちゃくちゃオシャレボーイですよ」他の子たちも同意といった様子で頷きます。ん?どういうこと?私はみんなに騙されているのだろうか。日々とにかく早く帰ることに命をかけているキャリアウーマンをみんなで騙しているのだろうか。私は疑いを抱きながら尋ねました。「ん?あれが?」「はい、あれがです」「オシャレなの?」「はい。超オシャレです」

 

私はこれまで年齢のわりに自分は若いと自負しておりました。見た目も考え方も、若い子たちと対等とはいかないまでも、充分に意思疎通ができるほどには若いと思っていました。しかしこの瞬間、それが音を立てて崩れ落ちていきました。もう全然わからん!若い子のオシャレとか、全然わからん!あんな変な柄のシャツを寸足らずの変な形のズボンにインしたあげく細いベルトをして、どこがオシャレなんだよ!オシャレっていったらな!ゴローズのネックレスをつけて、エンジニアブーツをゴトゴトいわせながら渋谷を闊歩することだろうがっ!高校生の時に渋谷SEED館で目の前からそんなキムタクと野口強が歩いてきたら、驚いてひっくり返るに決まってんだろうがっ!(実際にあった話)ふー。冷静沈着な私が、思わず熱くなってしまいました。

 

いやはや、歳をとるということは、こうして若者文化と乖離していくことなのですね。悲しいけれど、仕方がない。そして数日後、仕事の合間にKくんと話す機会がありました。調子のいい私が「Kくんっていつもオシャレだよねー」と笑顔で言うと、Kくんは少し驚いた表情をみせてから「ありがとうございます!」と嬉しそうに顔を赤らめました。Kくんが喜んでくれて何よりですが、その彼を見ながら、変なシャツに変なズボンに変なベルトに変な靴下だなー、と相変わらずどこがオシャレなのかさっぱりわからない私なのでした。


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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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