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2020年10月23日更新

西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百四十三回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

先日、リストランテ富士そばでディナーをいただいていた時のことです。仕事終わりでお腹はぺこぺこ。本来ならばミニカレーセットを食べたいところでしたが、そこはぐっと堪えて、ほうれん草そばをチョイス。おじさんしかいない店内で一人女子力を見せつけてみたものの、そもそも煌びやかなMIYASHITA PARK(渋谷に新しくできた商業施設)の目と鼻の先の富士そばで一人夕飯をとること自体、女子力とはほど遠い所業でありました。

 

ソーシャルディスタンスがばっちりとれた、客もまばらな店内。しかも席はパーテンションで仕切られており、先ほど通り抜けた3密どころか100密のような渋谷横丁とは違い、富士そばの意識の高さに感動。そして温かいツユの美味しさにも感動。街の再開発で大好きな『しぶそば』はなくなってしまったけれど、私にはまだ富士そばがある。そんな明るい気持ちになっていたのですが、少し前から店内に響く「ん…、んん…、んん…、んん…」という唸り声が気になって仕方がない。音の主は一人の男性客で、彼は食事をしながらずっと唸っていました。癖やチック症、それぞれの理由があるので仕方がないとはいえ、もし自分の彼氏だったら辛いなあと思いました。

 

食べることが大好きな私にとって、一緒に食事をしている時間というのはとても大切。食事中になんのためらいもなくゲップをするとか、いわゆるクチャラーなんて私からしたら正気の沙汰とは思えない。そんなのライアン・ゴスリングでも許しません。この食事の作法というのは、もろに育ちが出るなあとつねづね思います。昔お付き合いしていた電気も水道もとめられっぱなしの彼氏は、ごはんの食べ方がとても綺麗でした。それを指摘すると、本人は苦い顔をしてつぶやきました。「それ、前にも言われたことがあるんだよね。金がないとか何だかんだ言っても、結局おまえはいいとこの出だからなって」身体にしみついた行儀の良さは、アウトローな生き方も含めてがアーティストであると思っていた彼にとって鬱陶しいものだったようです。

 

一方で、20代で自分の会社を上場させたという若社長との食事は本当に地獄でした。「むしろあなたそれだと食べづらいでしょ?」というほど椅子にふんぞり返り、靴の裏がこちらに見えるほどに足を組み、しかも咀嚼しながら貧乏ゆすり。そして食べ物が口に入ったまま延々と続けられる自慢話に、かたわらにあった数十万の赤ワインのボトルでいつ殴ろうかと思ったほどです。

 

どんなに成功しても、子どもの頃から培ったものはなかなか繕えません。漫画を読みながらラーメンをすする人も、ジュースを飲みながらごはんを食べる人も、聞いてみると「子どもの頃からずっとそうだった」と言うのです。一人で子育てしながらも厳しく躾てくれた母に感謝だなあ。でも、そんな母と一緒に行ったニューオータニのエグゼティブハウス禅のラウンジで、寝ても覚めてもシャンパンを飲んでいたのはいささかお行儀が悪かったかもしれません。そして、そんな私に「誰かいい人いないかしらねえ」と言う母の声に聞こえないフリをしていたのは、もっとお行儀が悪かったかもしれません。


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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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