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西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百四十四回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

20数年ぶりにHARUTAでローファーを買いました。校則だったのかは忘れましたが、通っていた女子校では全生徒がローファーを履いており、そしてHARUTA派とREGAL派に分かれていました。どちらも日本が誇る老舗メーカーです。ただ、その派閥は形や素材云々ではなく、お金持ちの家の子はだいたいREGALを履いているというだけだったように思います。なので、私は昔も今もHARUTA派です。

 

学生時代は靴のお手入れなどすることもなく、とにかく履きつぶしていました。ソールが擦り減って、擦り減って、擦り減って、踵が地面に着くぐらいになってやっと買い替える!みたいな感じ。なかなか直らない髪のハネに悪戦苦闘して遅刻するのに、足元はまったく気にしていなかった17歳。若さですなあ。

 

しかし、もちろん今はそんなわけにはいきません。「おしゃれは足元から」「靴を見るとその人がわかる」などと言うぐらい足元は大切です。よく男性がつけている腕時計をチェックして、その人のセンスや経済力をはかる人がいますが、時計に興味がない私としてはG-SHOCKでもROLEXでも気にならない。そりゃ腕に鳩時計がついていたら「何、この人!?」と興味をそそられますが、いまだかつてそんなファンタジーな人にはお会いしたことがありません。

 

私が見てしまうのは、やはり靴。これは、これまでの彼氏だったり彼氏みたいな人だったり、彼氏だと思っていたけど向こうは思っていなかった人だったりの多くが靴好きだったということが起因しているのかもしれません。彼に連れられて初めてジョン・ロブに行った時は「こんなに美しい靴があるのか!」と驚きました。福生の古着屋では状態の良いデッドストックのスニーカーに二人で狂喜乱舞しました。はたまた休日はとにかく靴を磨いていたいという人もいました。彼いわく靴を磨くことで「無」になれるらしい。

 

しかしその靴好きも度を超すと、厄介この上ない。中には、6畳ほどの部屋をまるまるシュークローゼットに使っている人がいました。ずらりと並んだ靴は、どれもハイブランドの流行りものばかりで、見ていてちょっと恥ずかしい。「すごいねー。イメルダみたいだね」「イメルダって誰?」年下男子にはわからないネタだったわね。彼は「足、2本しかないのに、こんなにどうするの?」という私の言葉にひどくむっとしていました。

 

この彼も厄介でありましたが、世の中上には上がいて、先日、私は靴にひどく厄介なこだわりを持つ男性に遭遇したのであります。その人は彼女らしき女性と一緒だったのですが、酔っぱらっているのか、はたまた怪我でもしているのか、苦しそうな表情でずっと彼女の肩にもたれかかりながらヨロヨロ歩いていました。少し訝しく思い遠巻きに見ていたのですが、彼の足元を見た瞬間、私は唖然としました。なぜなら彼が履いていたのは一本歯の下駄だったのです。あの天狗が履いているやつですよ。あれを天狗じゃないのに履いているんですよ。どんなこだわりだよ!てか、自力で歩けないなら履くなよ!という私の心の叫びをよそに、そのカップルは無言で私の横を通り過ぎていきました。カッコン、カッコンという乾いた音を響かせながら。これ以来私は、普通の靴を履いていてさえくれれば何でも良いと思うようになりました。


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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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