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【女子のばんそうこう】20代の私が言われた「あなたには分からない」。

 

 

あの頃、私は広告会社に入って2〜3年めの下っぱコピーライターだった。

「たまひよ」に代表される妊婦さん&ママ向けの雑誌が色々出てきた頃で、その後発誌の広告プレゼンのため、某老舗出版社の会議室に来ていた。

私もコピーを書いたので大先輩であるディレクターたちに混ざっていた。先方はロマンスグレーのおじさまたちで、こちらのメンツも含め女性は私だけだった。

 

我々としてはとがった案を出したつもりは全くなかったけれど、昔気質の婦人雑誌を軸とする中堅出版社のせいか、我々の出す提案に少し面食らったようで、ほんのりとお互いの意識はズレていた。色々と意見交換をしている中で文脈は忘れたが、私が「女性はこう感じるのではないか」というようなことを発言した。先方の女性像がちょっと古くさく思えたからだ。何しろ女は私ひとりだったので、同性の立場からリアルな気持ちを述べたつもりだった。

 

するとロマンスグレーの上品なおじさまは穏やかに苦笑いしたまま「あなたのように広告会社でバリバリ働いてる女性にはねえ、分からないと思いますよ…」と言ったのである。

 

「…は?」となったのち、カッと頭に血がのぼった。わからない?わからないってどういうことだよ。もし若輩者である私の意見が的外れだとか、主語でかすぎ!というならばそう言えばいい。それなら納得する。でも「働いてる女には分からない」って何なんだそれ。

私はその頃20代前半で当然のように独身で、日焼けと日サロを繰り返してやたらと色の黒いチャラけた女だったけど、読者である妊婦さんには20代の人も多いはずで、ターゲットから遠く離れているとも思えない。そもそも私は読者を「妊婦さんだから」ではなく「同じ女性として」こう感じるのでは、と言ったのだ。例え編集長だとしてもかなり年配の男性に「分からないでしょ」と断言されるほどではないだろ!と思った。

 

私自身をバカにされた怒りは実は大したことはなく、カッとなった大半の理由は、読者層の女性たちを決めつけられたように感じたからだ。

 

彼らの先刻からの「ママってこうだから」はあまりにステレオタイプで、独身女や働く女とは全く違う人種で、家庭と子供のことだけ考えていて当然なのだ、というトーン。私にはそれが全く理解できなかった。

 

確かに妊娠したことでこれまでとはスイッチが切り替わるだろうし、そのことで頭がいっぱいにもなるだろう。だけどそういう日々があったとしても、あなたの読者はママという名の生物じゃないんだぞ。ついこの間まで私と同じ生活をしていたかもしれないし、何ならお腹が大きい今だってバリバリ働いてるかもしれないんだぞ。どのフェーズの女だって、しっかり地続きなんだぞ。

子供が宿っただけでいきなり母性が全身を包んでママに変身したりはしない。「ニコニコ&ほんわり&家族のことだけを考える献身的な女」なんて多分ほとんどいない。どの女もそれぞれ、変わりゆく自分と人生にもがいたり悩んだりしているぞ。あなたたちが自分の世代の母や妻(の上っ面)を見てきたのと同じような目線でつくる「ステキな母親」の広告なんて、私たちは作らないぞ。

 

ムカついた私はそれ以降は発言をしなかったのだが下っぱコピーライターなので特に進行に問題はなかった。全体的にもいまひとつ噛み合わないまま時間が来て我々はその会社を出た。歩きながらいまだ納得のいかない顔をしている私にディレクターが「古くさいよな、あれ」と言った。その後大先輩たちは私をフォローしたりなごませたりしてくれたけど、「バリバリ働いてる女には分からない」という言葉は何十年経った今でもふとよみがえり、心にちくりとトゲを刺す。ちなみにその雜誌はほどなく廃刊となった。

 

【女子のばんそうこう】20代の私が言われた「あなたには分からない」。画像

 

この話に特にオチはない。

男女雇用機会均等法施行から10年未満のあの頃、総合職は「大多数の男性とごく少数の女性」という時代だったし、妊娠時や出産後の働き方も今よりずっとずっと険しかった(育児休業法の施行は1992年)。だけど正直、令和の現在それが大きく改善されたとも思わない。相変わらず女性をとりまく世界は「若い女ってこうでしょ」「母親ってこうでしょ」の決めつけオンパレードだ。

 

だからあの日、出版社のおじさまが私に言った言葉を忘れないようにしたいと思う。女を決めつけ、分断する言葉。未婚には分からない。子を生んだことがない人間には分からない。働く女には分からない。専業主婦には分からない。確かにそういうことだってある。だけど誰かが言うさまざまな決めつけと分断に、安易に頷いたり乗ったりしないようにしたい。そして自分自身もその決めつけをしないように気をつけたい。

 

考え方もライフスタイルも人の数だけあるけど、若い女、独身の女、結婚した女、子供のいる女、老いた女、選ばなかった道、迷う道。バラバラなようでいてそれらは全てひと続きだし、どれも他人事ではない。みんなの来た道であり、みんながこれからゆく道なのだ。いまだ女に厳しいこの世の中で、せめて「分かるよ」「分からないけどそういうのもあるよね」と思いながら、心の中でひっそりと手をつないでいたい。

 

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この記事を書いたライター

広告会社コピーライターからなぜかダンサーに転身、その後IT企業でライター&クリエイティブディレクターとして勤務。共同購入「ギャザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。2000年から「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを書き続け、ごく一部でコアな人気を博す。現在はフリーでライティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。Blog: 「フーテンひぐらし」 Twitter: @HironoYuna
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