ドメスティック・バイオレンス(DV)なんてことが普通に言われるようになりましたが、みなさんお怪我なく元気ですか?彼氏に暴力を振るわれて横っ腹が痛かったりしませんか?
さて、今回は、怒りっぽい人の精神分析をしてみたいと思います。
怒りっぽい人はなぜ怒りっぽいのでしょうか。
さっそく一緒に見ていきましょう。
「本当の自分」はこういうんじゃない!
あなたの彼氏があなたに八つ当たりした場合、彼はあなたの何らかの言動に対して怒っているわけではありません。あなたの言動を「きっかけとして」、彼は自分自身に怒っています。
具体的には、彼は「本当はこうありたい自分」になれないことに怒っているのです。
たとえば、安月給で残業続きの彼が怒った場合、彼は「俺は<本当は>高給取りになれる男だ」と思って怒ります。また、「俺は<本当は>会社や周囲の人に気づかいされ、クリーンな環境で働くにふさわしい男だ」と思っています。
その「本当のこと」を顧慮することなく、彼女が彼に「また残業?」とか「今月もお金がないの?」と言うから怒るのです。「俺は<本当は>こんな男じゃないのだ!」と。
なぜ自己主張が怒りになるの?
そこでお利口さん女子はこう考えるでしょう――「本当はこういう男ではないのだ」ということを、怒ることによってではなく、もっと冷静に彼女である私に伝えることはできないの?と。
たしかにそうですよね。世間では怒りによって何かを他者に伝える行為は「低級」とか「野蛮」とされてますもんね。
ではなぜ彼は怒る「ことしかできない」のでしょうか。
それは、彼は怒ることによってしか自分の正当性を主張することができないからです。
自分の正当性というのは、先に述べた「本当の俺」のことです。現実の安月給の俺ではなく、持てる潜在能力をすべてフルに使えば高給取りになれる俺のことです。
その「理想的な俺」は、現時点においては、世間から不当な扱いを受けています。つまり「理想」は理想のまま、現実は安月給でいっぱい残業するしかないという「不当な扱い」を受けています。
その不当性を証明する方法は1つしかありません。安月給で長時間働くしかない苦痛にしがみついて離れないことです。そこから離れてしまうと彼の「理想」はただの絵空事になります。苦悩にしがみつき、必死に働いている姿とセットで「理想」を語るから、どうにか理想が理想として機能するのです。
苦悩にしがみつく人は、自分がいかに大変かを言葉で説明しようとします。しかし苦悩が深すぎたり、肉体的に疲れすぎたりしていたら、言葉で説明するという方法をすっ飛ばして怒ります。「先週も言っただろ?聞いてなかったんか、俺の話! 俺は最大限に頑張ってもこれだけしか給料もらえないんじゃ!」と怒るのです。やれやれ。
男の絶望・女の希望
この話のベースにあるのは、男の絶望です。
たいていの男は「俺はこんなもんじゃない。本気を出せば(本気を出せる環境に行けば)もっと素晴らしい成果をあげることのできる立派な男になれるはずだ」と思っています。
それは、今の日本の教育が彼にそう思わせた、という理由もあります。社会が彼にそう思うように強制しているという側面もあります。競争社会ですからね。意識的に競争から離脱しないと、どうしても他人と自分を比較して、自分のダメさを思い知ります。それと同時に「理想」が底上げされます。理想がどんどん上がっていくと、怒りの沸点が低くなります。
つまり男は、自分の人生に絶望しやすい性質を持っているのと同時に、自分に絶望しやすい環境に身を置くことを世間から暗に強制されています。
男性並みに必死で仕事をしている女性も同じです。
しかし女性はなぜか、絶望を希望に変える何かを持っています。なので、女子で怒りやすい人の割合は、男より低いはずです。
男と比較した場合、女子が自分の人生に希望を見出しやすいと言える理由はいくつかありますが、それを話し出すと長くなるのでここでは触れません。
ともあれ、怒りっぽい彼氏は、自分に絶望しているから怒りっぽいのです。
(ひとみしょう/作家・コラムニスト)
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