大人女子のためのWebメディア
検索
  • Grapps
  • 大人の恋愛
  • 西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百六十一回目。
2021年07月02日更新

西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百六十一回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

緊急事態宣言が解除になり、『マンボウ』ことまん延防止措置に移行されて2週間ほど。個人的には何も変わらない日々が続いているので、マンボウでもサルサでも何でも良いかなって感じです。まあ欲を言えば、今一番踊りたいのはランバダですかね。情熱的なラテン男と身体を密着させて踊り狂いたいです。何しろ夏はすぐそこですから。よし、今から練習しておこう。

 

今回のまん延防止措置で最も特徴的であり、そして奇異であるのが飲食店に適用されたルールでありましょう。東京での酒類の提供は『2人以下、90分以内、20時まで』とのこと。つまらなくても90分で切り上げられるのは良いかもね。でも、そもそもそんな早い時間から飲める人は真っ当な社会人じゃないでしょう。まったく。こんなルールじゃデートもできやしない!そんな風に考えました。しかし、世間の多くの若者は違う考えを抱いたようで、ネットには「恋が始まりそうなルール!」「これはデートに誘う口実にできる!」という前向きな意見が溢れていました。それらを読んで、私は己の不甲斐なさに愕然としました。このコラムで「恋がしたい!」と何年も叫び続けている私なのに、恋に対してアンテナを張り巡らせているつもりだったのに、まん延防止措置のルールを恋に紐づけることすらできなくなってしまった。ああ、私のアンテナは長年強い雨風にさらされ、朽ち果ててしまったのだろうか。そんな状態でこのコラムを書き続けて良いのだろうか。読者の皆様もそろそろ「西山繭子は原稿料欲しさにのらりくらりと連載を続けてはいるが、結局のところ恋をしていないし、しそうにもない」と気づいているのではなかろうか。ああ、どうしましょう。家でエア・ランバダを踊っている場合ではありません。

 

そう一人うちひしがれていると「先日のお礼に、食事に行きませんか?」というお誘いがありました。休日だったので「はい。ぜひぜひ」と即答すると「では17時に店を予約しておきますね」とのことでした。平日の17時から飲める真っ当な社会人ではない男性。それは父親です。名だたる作家ではありますが、ある意味真っ当ではありません。父が予約してくれたのは小さなビストロ。まずはスパークリングで乾杯です。ああ、店で飲むお酒の美味しさたるや!何ヵ月ぶりのことでしょう。「父の日に綺麗な花をありがとう」「いえいえ。えーっと…リエットって何でしたっけ?」礼を述べる父の横で、黒板に書かれたメニューしか見ていない娘は、早々にグラスを空にすると「白ワインをいただけますか?」と前のめり。90分1本勝負。ここはピッチを速めなくてはいけません。何度も父に「お水も飲みなさい」と窘められながらも、ワイングラスを傾ける手が止まらない娘。そして、そのうち酔いがまわった娘は「ねえ父、あたしゃね、もう誰かを愛したり、誰かに愛されたりすることがないんひゃないかって思うんですよ」と弱音をぽろり。父は「そんなことないですよ。大丈夫」と穏やかに笑いました。そして「あなた、いくつになったんだっけ?」と優しく私を見ます。「43歳です」「え!」途端に目を丸くする父。「けっこういってるね。ああ、そう。それは大変だね」百戦錬磨の伊集院静をも困らせる私っていったい。心配をする父のためにも、幸せになろうと誓った夜でありました。

 


【この記事も読まれています】
ブックマーク LINEで送る

この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
  • Grapps
  • 大人の恋愛
  • 西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百六十一回目。
アプリでGrappsが
サクサク読める♪

5000本以上の記事が読み放題♪悩める女性のバイブルGrappsを 電車の中でも移動中でも快適にチェックすることができます。