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2021年07月16日更新

西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百六十二回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

 

とある休日の昼下がり、私は頭をからっぽにしてネットサーフィンをしていました。マダム向けアパレルブランドDo CLASSEの新作アイテムをチェックしたり、元スペイン代表のダビド・シルバ選手のインスタを眺めたり、世界中にあるRelais&Châteauxグループのホテルの美しさに溜息をついたり。そこには何のしがらみも抑制もありません。コロナ禍の暗いニュースになど目もくれず、ひたすら欲望のままにネットの波を泳いでいきます。

 

普段、私は食べ物のことを調べる頻度が高いので、ニュースサイトにはアルゴリズムによってグルメ記事が多く並びます。気になったものをふむふむ眺めていると、そこに見覚えのある名前を見つけました。それは高校生の時に付き合っていた男の子の名前でした。高校3年生だった彼も今では社長に。

 

懐かしいなあと記事をスクロールしていくと、そこにはインタビューに答える彼の写真がありました。しばし目がテンになった私は、いまいちど記事をさかのぼり最初から読んでみました。名前。うん、合ってる。会社名。うん、お父さんの会社。写真…、誰?私は、時の流れの残酷さに言葉を失いました。高校3年生だった当時、それはそれはハンサムで、他校の女子高生が待ち伏せするほどだった彼。それが25年経った今、頬はやつれ、目の下はたるみ、頭髪は寂寥感に包まれた荒野のよう。

 

この現実を一人で抱えきれなくなった私は、母にメールをしました。「××って覚えてる?」「うん。コロッケたくさん持って来てくれた可愛い子でしょ」そして写真を送ると母も絶句。メールだけど絶句。私は、姉にもメールをしました。「××って覚えてる?」「うん。松岡俊介にそっくりだったおぼっちゃまでしょ」すぐさま写真を送ると姉からの返信は「これ、長年現場主義のベテラン刑事でしょ?」というものでした。言い得て妙。25年という月日を経て、イケメン高校生からベテラン刑事と化した彼にショックを受けつつも、でもこの人と結婚していたら悠々自適な暮らしをしていたのかなあなどと考えました。

 

彼の実家は飲食関連の会社をいくつも経営しており、よく遊びに行っていた家は大豪邸でした。お父さんもお母さんもいつもにこにこゴージャスで、お兄さんは医学部に行っていて、彼は高校3年生のくせにシーマを乗り回していました。そうかといって決してイヤな奴ではなく、私の母にお父さんの会社のコロッケをたくさん持って来てくれたり、デート中に寒がっていると自分のコートをかけてくれたり、優しくて面白くて格好良くて素敵な男の子だったなと思います。

 

どうして別れたのかなと考えると、これといった理由もなく「お互い若かった」の一言しかありません。その夜、姉と電話で話をしました。「どんなにお金持ちでも、あの人が毎日家にいるって考えたら、やっぱり無理だなって思った」私がそう言うと姉は呆れたように答えました。「あのね、向こうも今のまーたんを見たらまったく同じこと思いますよ」え?そうなの?自分のことを棚にあげまくっていましたが、どうやら現実は私が思っている以上に厳しいようです。


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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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