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2021年10月08日更新

西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百六十八回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

日本列島で台風16号が猛威をふるっている金曜日の朝、私は長靴に合羽という完全防備で自宅を出ました。その日は久しぶりに何もない休日。本来であれば「台風の日に仕事に行かなきゃいけない人、かわいそー」とゴロゴロしながら家で本でも読んでいるところですが、この日は何が何でも出かけなくてはいけない理由がありました。

 

それは6年ぶりに愛する男が戻ってきたから。その男に会うために私はハチ公バスに乗りこみます。フロントガラスに激しく打ちつける雨。まるで彼と別れたあの日に流した私の涙みたいだわ。私は男のことを想います。この6年間、彼はどこで何をしていたのかしら。彼はいつだって多くを語らない人。ふと現れたと思ったら、また消えてしまう。私の心をかき乱したまま。「ハチ公バスだ、ワンワンワン♪」車内には終点である渋谷駅に到着することを教えてくれる歌声。ああ、彼と二人で口ずさんだこの…、いや。絶対に歌わない。彼は「ワンワンワン♪」なんて歌わない。バスから降りた私は、渋谷の街に降り立ち待ち合わせの場所へと向かいました。傘に当たる雨音は暴力的なまでに世界の音をかき消します。その音と重なるかのように彼の姿が脳裏をよぎりました。

 

予約をした席に腰をおろし、彼が来るのを待ちます。まるで永遠にも感じる時間。しかしそんな時間などはおとぎ話の世界。彼は必ず現れる。そしてまたあざ笑うかのように私の心を奪っていく。The time has come。館内が暗くなり静まり返った次の瞬間、懐かしい彼の姿が私の目の前に現れました。そして私を見つめて言います。「ボンド。ジェームス・ボンド」ああああああ!かっけえええええええ!きゃああああああ!抱いてええええええ!もう、もう、もう!

 

今回もやっぱり最高だった007なのであります!公開初日の映画館は台風にも関わらず、ジェームス・ボンドを心待ちにしていた人々でほぼ満席でした。以前も007についてここで言及しましたが、この映画は絶対に彼氏と観てはいけません。だって映画が終わったあとに隣を見たら、どんな男もクズに見えてしまうから。それぐらいボンドは格好良いのです。

 

「マティーニ。ステアではなくシェイクで」あはぁ~ん。もうその色気に溜息です。ボンドは絶対に「レモンサワー。濃いめで」なんて言わないのです。そしてボンドはちまちまメールなんて打ちません。必要あらば即電話。「りょ!」なんてLINEスタンプを送ったりしないのです。敵と闘うボンド。女を愛するボンド。スクリーンの中の彼を観ていて、男に大切なものは体幹と性欲なのだと改めて思いました。

 

お金とか優しさなんてものはちょっとした付加価値にしか過ぎないのです。新しい恋の兆しがまったくない今日のこの頃ですが、久しぶりに胸がときめきました。ダニエル・クレイグは今回が最後のボンド。ああ、残念すぎる!でもきっと私は次のボンドにも恋をするのだろうな。それは、また6年後とかかしら。その時、私は49歳…。Grappsの連載タイトルが「明るいおひとりさま終活」なんてものに変わっていないことを切に願います。


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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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