“【お便り募集】文筆家ひとみしょう お悩み解決” に送っていただいたお便りの中から、お悩みをひとつピックアップしてひとみしょうさんがお答えします。
「キャリーさん34歳女性」のお悩み
私はバツイチなのですが、離婚してから次の彼ができずに悩んでいます。彼というか、恋もできないんです。何人か男性と連絡を取ったり、食事デートに出かけたりしてみたのですが、前みたいに「好きかも」「いいかも」という気持ちが湧きおこりません。
将来的な結婚願望はあるものの、男性から結婚前提の話をされれば「すぐに結婚はちょっとな」と思ったり、でも男性と会う時は「この人は結婚相手としてどうだろう」なんて視点で見てしまうこともあります。
恋愛をしたい気持ちはあるのですが、今の自分の感情がチグハグで、結局のところ恋愛ってなんなの?と思ってる自分もいます。バツイチからの次の恋愛ってどう始めればいいんでしょうか?
〜ひとみしょうのお悩み解決コラム〜
結局のところ、と言われると、結局のところ恋愛って、性欲に振りまわされている行為です。
男女問わず、健康な人々は、健全な量の性欲を抱えており、それがなにかに触発されて、発露するのが恋愛です。
キャリーさんの精神分析結果
性欲がおおっぴらに語られなくなって久しいですが、でもその「隠されていること」が、じつは恋愛の本質でしょう。男は言うまでもなく、女子だって「彼に抱かれたい/彼を抱いてみたい」と思うから彼の前でハダカになるわけで(なってくれるわけで)。
とすれば、現在キャリーさんは「そこまで性欲に振りまわされていない」賢者タイムにいると言えます。
この賢者タイムのことを、キルケゴール心理学は「永遠に気づき始めている段階」と定義しています。永遠というのは、「善く生きたいと思う気持ち」のことです。私たちはなぜか知らねど、「善く生きたい」と思っていますね?「恋愛」において、深夜のホテルで不埒なことをしていても、ある瞬間ふと「こういうことをしていてはダメだ」と思う、といったふうに。「オール」したあと始発電車に揺られながら「私はいつまでこんな遊びをするのだろう」と、誰にも言えない哀しい気分になるといったふうに。
これまでのキャリーさんは「善く生きたい」と思う気持ちに、いわば蓋をして「気持ちいいことや楽しいこと」に真剣に生きてきました。しかし、離婚(だかなんだか)をきっかけに、「そういうことより善く生きたい」と思うようになりました。必然的に性欲は後景化し、キルケゴール心理学がいう「永遠」が前景化しました。
今のキャリーさんはそのような状況にあります。
どうやって新しい恋愛を始める?
では、そのような「賢者」は、このあとどうやって新しい恋愛を始めるといいのでしょうか?
答えは、「同じような考えの人が自然と寄ってくるから、そう心配せず、ただ待っていればいい」です。
キャリーさんは、永遠をまったく意識していない段階から、永遠を少し意識する段階へと変化しました。変化後の1年生が今のキャリーさんです。まだ1年生だから、右も左もよくわかりません。だから、この先の人生を案じます。
でも心配無用です。2年生や3年生、なかには15年生とかがいて、そういう諸先輩方がキャリーさんに声を掛けてくれます。そこから次の恋愛が始まります。運がよければ再婚します。
「恋愛」の先
離婚したのち、なんらか考え方が変わる人はまあまあいます。
ぼくの知り合いだと、離婚後、それまで勤めていた華やかなIT企業を退職し、学校の先生になりたいと思い、教職免許を取得するために大学に通っている人がいます。彼にはなんらかの気持ちの変化があったはずです。「カネさえあればいい女が寄ってくる」という世界にまったく魅力を感じなくなった。いや、まったく、はウソですね。やっぱり男ですから、そういう世界に少しは魅力を感じます。が、それとは正反対の世界で、これまでとは正反対の生き方をしたい。こう思うようになったのです(でしょう)。
というわけで、結局のところ恋愛とは、性欲に振りまわされいる行為ですが、じつはその先に、永遠が性欲を上回る世界があり、そこで行われる恋愛とは「愛」です。
恋愛も愛も、見た目は同じです。男女が寄り集まり、あれやこれやをします。が、心の中という目に見えないものがまるで違います。
前者は男女お互いに性欲に振りまわされており、日々理不尽な思いをしています。後者は……それこそ永遠に愛し合うのです。
よき人生にならんことを。
※参考:拙著『自分を愛する方法』玄文社(2020)
(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)
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