キルケゴール「心理学」と性欲
以上のことを「それとなく」本に書いたのが、キルケゴールという人です
彼の「心理学」には、人生に対する絶望と性愛がいかに分かちがたいものであるかが暗示されています。
彼はレギーネという「いいとこのお嬢」に恋していました。しかし、みずからの人生に絶望していたキルケゴールは、最終的に彼女と「できなかった」。そのことで彼はさらに絶望します。絶望のなか、「ほかの女子」を「買う」こともあったみたいです。そのことを彼は日記に書き残していませんが(まあ、ふつうは書き残さないでしょう)、しかし、彼の著作と日記の両方を読めば、「買った」のではないか、と想像されます。なぜ買ったのか?人生に絶望していたからです。その絶望の発端は彼の性欲、すなわち「いいとこのお嬢」とやりそこなったという経験に起因します。
恋愛と絶望と性欲はつねに1セット
恋すれば性欲が湧いてきて当然です。女子だって似たようなものでしょう。
しかし男の場合は、女子よりも「できる」確率が低い。そのことはすべての男が経験的に知っています。だから男は「できるかできないか」に敏感になります。
そして、できないとわかると、みずからの人生に対する絶望をさらに深めるのです。
簡単にいうと、「恋愛」と聞くと、男は「またダメな自分を認識しなくてはならないのか」と思ってしまうのです。
「恋愛?よし、あの子と結ばれるまで前向きに頑張ろう!」と思える男は少ないのです。みんな、多かれ少なかれ、「女子ウケする年収」ではないし、「女子ウケするルックス」でもないし、それゆえ「恋した結果さらに絶望する自分」を経験してきているし、そういう経験をしても性欲は消えてなくなってくれないからです。
恋愛と絶望と性欲は、男のなかでつねに1セットなのです。
※参考 拙著『自分を愛する方法』玄文社
(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)
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