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2022年06月17日更新

西山繭子の「それでも恋がしたいんだ!」第百八十六回目。

それでも恋がしたいんだ!/西山繭子

 

前回このコラムで書いたプラチナ・ジュビリーを記念したバッグが英国から届きました。届けてくれたのは佐川急便さん。ここ数年、私の家にやって来る男性といえば佐川急便さん、ヤマト運輸さん、日本郵便さん。イレギュラーで冷蔵庫の設置と給湯器の修理が入ったぐらいでしょうか。

 

土曜日の19時、すでに就寝の準備に入っていた私は、洗い髪にパジャマ姿でお出迎え。そしてお兄さんの100万回目の「あ、判子、大丈夫っス」に頷きながら荷物を受け取ります。それは確かに英国の老舗百貨店ハロッズのもの。不思議に思った私はお兄さんに「DHCじゃないんですね?」と尋ねました。お兄さんは首を傾げながら「DHC?海外からのお荷物ですね」と答えます。「DHCから配達メールが届いたので、この時間に指定したんですよ。だからてっきりDHCさんが届けてくれるのだとばかり」「DHC?」「あの、黄色と赤の」「ああ、DHLっスね」何でもDHLと佐川急便は提携しているとこのこと。

お兄さんは「またよろしくお願いします!」と笑顔で去って行きました。私だったら「おい!何回、判子いらねえって言わせんだよ!」「DHC?ボケ防止のサプリでも飲んでおけよ!」と怒鳴ってしまいそうなのに、佐川のお兄さんは何て優しいのでしょう。

ここ最近、めっきり男性の優しさから遠のいている私は、その晩、幸せな気分で眠りにつきました。

 

翌日、ハロッズの段ボールを開けてみると、さすが外国、老舗百貨店とは思えぬ雑な梱包で注文したバッグがぶちこまれていました。ほほう、これか。実際に手にしてみての感想は「店で実物を見ていたら絶対に買っていない」なのですが、まあお祝いですからね。記念の品として大切に使いたいと思います。ただ、雨の日に持ったら確実に色落ちしそうなのでそこは要注意です。

 

プラチナ・ジュビリーという高貴な祭典からものすごくかけ離れた現実。『華麗に気高く美しく』そうありたいと願ってはいても、女一人で必死に生きていると、色落ち、湿気、ポイント10倍といった生活のあれやこれやが常について回ります。そこから逃れるために、何もない休日、家のことはそこそこに図書館で借りたヴァルモールの詩集を開きました。

 

19世紀に活躍したフランスの女流詩人。彼女は愛について謳った作品を数多く残しました。綴られた激しい情愛の言葉に胸を打たれながらページをめくると、一枚の紙がはらりと落ちました。拾い上げてみると、それはラーメン屋の生ビール無料券。美しき詩の世界から一気に現実に引き戻されます。ヴァルモールの詩集にビール無料券をはさんだのは誰だ!と怒りにかられながら、あ、でもまだ使えるかな?と有効期限を見ると何と2001年の9月。20年間、詩集にはさまれたままのビール無料券。これをはさんだ人は、今、愛に包まれているだろうか。ふとそんなことを考えながらも、もう頭の中はビール一色。休日の明るいうちから飲むビールの美味しさたるや。華麗に気高く美しく。まだまだそうはなれそうにもありません。

 

(西山繭子)

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この記事を書いたライター

日本の女優、作家。東京都出身。 大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。 テレビドラマを始め、女優として活動。 最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。 著書に 『バンクーバーの朝日』 『色鉛筆専門店』 『しょーとほーぷ』 『ワクちん』 などがある。 オフィシャルサイト→FLaMme official websiteオフィシャルブログ→ameblo
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