
若い女性の間で増えている子宮内膜症。「生理が重い気がする…」と感じて、その原因が子宮内膜症だったという人は少なくありません。どうして子宮内膜症を発症してしまうのか。今回は、その原因と子宮内膜症が増えている理由を紹介します。
子宮内膜症の原因は分かっていない
子宮内膜とは、妊娠するために厚くなっていく、いわば赤ちゃんのためのベッドのこと。 排卵が終わり、妊娠していない場合は不要になるため、子宮内膜ははがれ落ちて血液といっしょに体外に排出されます。これが月経です。
子宮内膜症とは、この子宮内膜が子宮の内部ではなく、卵巣やお腹の中など、子宮の内腔以外にできてしまう病気のこと。 生理痛、骨盤痛、性交痛、排便痛などを引き起こし、さらには不妊症の原因にもなります。
生理のある女性なら誰でも子宮内膜症にかかる可能性があり、10人に1人が悩まされ、30代の女性では実に5人に1人が発症していると言われています。 ただし、子宮内膜症の原因は、いまのところ断定できるものがないのです。
子宮内膜移植説
子宮内膜症の原因として断定できる説はなくても、有力な説ならあります。そのひとつが、子宮内膜移植説といって、 生理時に排出される血液(月経血)の一部が逆流するという説です。
月経血には子宮内膜が含まれているため、逆流することで体外に排出されずに子宮以外の臓器に子宮内膜が転移してしまうというものです。 月経血の逆流は誰にでも起こることがありますが、タンポンや月経カップのように月経血を受け止める生理用品の影響で、月経血が逆流することはありません。
体腔上皮化生説
もうひとつの有力な説は「体腔上皮化生説(たいくうじょうひかせいせつ)」です。 これは、**腹膜(腹部の臓器を覆っている膜)がなんらかの原因(女性ホルモンや月経血の影響など)で、子宮内膜に変化するという説です。
この2つの説のうち、より有力なのは「子宮内膜移植説」といわれていますが、子宮内膜の原因はまだ完全にはわかっていないのが現状です。
子宮内膜症は現代病でもある
子宮内膜症は、以前は40代の女性に多かった病気ですが、10代、20代といった若い世代の女性にも増えてきていることが分かっています。 その理由には、下記のようなことが考えられます。
- ・一人当たりの出産数が減っている
- ・初産年齢の高齢化
- ・生理の回数が多い
- ・食生活の欧米化
- ・ストレスの増加
「一人当たりの出産数が減っている」「初産年齢の高齢化」「生理の回数が多い」を補足すると、 約100年前の女性は、20代前半~30代後半まで4~5回の妊娠・出産を経験していたため、生涯の生理回数が45~50回程度しかなかったといわれています。
一方、現在では、初経年齢も早くなり、晩婚化や少子化、さらには閉経年齢も遅くなっているため、 生涯の生理回数が450~500回もあるといわれています。子宮内膜症は生理の回数が多いほど発症しやすくなると考えられているため、現代ではリスクが高くなっているのです。
食生活の欧米化、ストレスの増加なども含めて、ある意味、子宮内膜症は現代病とも言えます。
まとめ
子宮内膜症は原因がはっきりわからないため、予防が難しい病気です。また、月経痛は多少なりとも正常な人にもあるため、 「少し重くてつらい」程度だと市販の痛み止めなどで我慢してしまう人も多いのではないでしょうか。
子宮内膜症は痛みだけでなく、悪化すると不妊の原因にもなってしまいます。子宮内膜症の代表的な症状は、月経痛です。 「月を追うごとに痛みが増してくる」などの症状があるときは、婦人科で診察を受けるようにしてください。