
セックス・妊娠・出産に関する医学的に正しい情報を学校や日常生活で学ぶ機会は意外と少ないです。性行為から妊娠、出産に至るまでの“知っているようで知らない”正しい知識を、悩める女性へ向けて産婦人科医であり性科学者である宋 美玄(そん みひょん)先生が、優しく解説します。
女性だけが持つ出産のリスク
男性が父親になるにあたっては、健康や命に関わるリスクはありません。せいぜい産院に駆けつける時に慌てすぎて交通事故に遭う可能性があるというくらいでしょうか。
メスが自分の体を危険にさらして出産するのは人間だけではありませんから、この点について「神様は不公平だ!」と天に向かって叫んでも仕方のないことです。
だから、自分が妊娠して、初期にはつわりに苦しみ、お腹が大きくなってからは腰痛に耐え、陣痛がきてからは痛み苦しんでいる時に、赤ちゃんのお父さんに対して「何で私だけがこんな目に遭わないといけないの!?」「あんたにもこの苦しみがわかればいいんだ!!」と思うことはあまりしたくないことですよね。
もしそう思ってしまうような相手なら、そんな男の子供は妊娠しない方がいいでしょう。それで万に一つでも自分の身に何かあったら、悔しくて浮かばれませんよね。「二人の子供を産むためなら、苦しくても私がんばる!」女ならそう思える相手の子供を産みたいものです。
出産は始まりでしかない
もし、母子ともに元気で妊娠出産を終えたとしても、それはお母さんとしての長い道のりの始まりでしかありません。育児は大きな喜びをもたらすものです。
でも、自分自身がやりたいことは確実に制限されますし、その後何十年にもわたって、その子の親として責任感を持って生きなくてはいけません。それは多くの女性にとってはひとりでは手にあまる道のりです。
子供を産む女性の中には、初めから子供の父親なんていらない、私はお腹の子供がいればいい、この子を産むためなら死んでもいい!という強い意志のもと、ひとりで子供を産み、育て上げるシングルマザーもいらっしゃいます。
でも、ほとんどの女性は相手の男性に対して、子供の父親として、そしてライフパートナーとしての役割を求めるのではないでしょうか。その男性と出会い、お付き合いをしてもろもろの経過をたどり、二人の子供を作るに至るまでの期間よりも、子供が生まれて、子育ての喜びや悩みを共有しながら一緒に育て上げ、一緒に人生を歩んでいく期間のほうが、普通ははるかに長いでしょう。
そう考えると、妊娠するということ自体もそうですが、産むのはこの男性の子供でいいのだろうかということも、慎重に考えなくてはいけないことだと気づきます。
人生は甘いことばかりではありませんし、予定通りに進むことばかりではありませんから、「この人こそ私の運命の人だ!」と思って一緒になっても、別れなくてはいけなくなる人もいるでしょう。でも、妊娠する時には相手の男性のことを「この人の子供を産むためなら死んでもいい!」と思ってほしい。たとえ結果的にその男性と永遠のパートナーとはならなかったとしても
。そう思わなくては乗り越えられないほど、妊娠・出産・子育ての道は険しいのです。もちろんその代わりに、大きな喜びと幸せも得られますが。
そして一度子供を産んだら、もしも、その子供の存在が邪魔になるような状況になっても(例えば、子供の父親と別れて、新しい恋人ができるなど)、決してリセットすることはできません。だから、覚悟を持って妊娠してください。
参考文献:宋 美玄「学校では教えてくれないセックス・妊娠・出産の話 女医が教える 後悔しないために知っておきたい11の事」