
セックス・妊娠・出産に関する医学的に正しい情報を学校や日常生活で学ぶ機会は意外と少ないです。性行為から妊娠、出産に至るまでの“知っているようで知らない”正しい知識を、悩める女性へ向けて産婦人科医であり性科学者である宋 美玄(そん みひょん)先生が優しく解説します。
悩んだ末の判断はすべて尊いものです
多くの場合、赤ちゃんの両親にとって赤ちゃんの病気は青天の霹靂ですから、どうしていいいか全くわからないことも多いでしょう。そんな場合に、「どうするかは夫婦で決めてください」といわれたら「突き放された」と感じるでしょう。
また「母親の負担を考えたら、妊娠を中断するのが妥当だと思います」といわれたら「何もわからないまま医師に中絶させられた」とも感じるでしょう。担当医とのコミュニケーションは後々までとても重要なので、どうか、呆然としていて、あまり聞いていなかったなどということのないように、納得がいくまで何度も医師の話を聞くようにしてください。
産むか産まないかを判断するのは最終的には赤ちゃんの両親です。赤ちゃんのお父さんとお母さんの間で意見が食い違うこともまれではありませんが、最終的には赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる以上、決定権はお母さんにあります。
こういった問題は、実際に直面してから考えたり夫婦で話し合ったりし始めても、冷静に判断できるとは限りません。また、十分に考える時間がないこともあります。人工妊娠中絶という選択肢は、妊娠21週6日までという限りがあるからです。
また病気ではありませんが、妊娠21週までに破水してしまって、そのままがんばって妊娠を続けたとしても、赤ちゃんの予後が悪いだろうと予想される場合に、諦めるか、がんばるかの判断を急に迫られることもあります。その場合にはほとんど考える時間がないこともあります。
そこで夫婦で意見が分かれてしまい、自分は産みたいと思っているのに、子供のお父さんであるご主人に反対されて悩み苦しむ妊婦さんもいます。お腹の中にすでにいる赤ちゃんを産むか産まないかという大きな選択をするにあたって、赤ちゃんの父親と意見が分かれることはとても辛いことだと思います。
夫婦が二人の間に子供を望むなら、病気を持った子供を授かった時にどうしたいと思っているのか、お互いの考えを事前にすり合わせておくのもいいかもしれません。それも大事な価値観の一つです。
難しい問題について赤ちゃんのために真剣に考えた結果なら、それがどんな判断であっても尊いものだと私は思います。中絶という道を選んだ場合、赤ちゃんをちゃんと産んであげられなかったことで、自分を責めたり恥ずかしいと感じたりする人もいるだろうと思いますが、胸を張ってほしいと思います。
そして、そういった妊婦さんとそのお手伝いをした医療者を法律で守ってほしいと願っています。
参考文献:宋 美玄「学校では教えてくれないセックス・妊娠・出産の話 女医が教える 後悔しないために知っておきたい11の事」